入院中のご家族との思い出作り
当病棟は急性期病棟ですが、周術期の患者様からターミナルで看取りを迎える患者様まで様々な患者様の看護を行っています。今回はターミナルで余命が限られた患者様とご家族さまとの思いで作りについてお話しします。
患者様は90歳代男性、胆管がん末期で、(本人へ未告知) 黄疸著明、意識はしっかりとありましたが、入院時、余命は1ヵ月ほどと宣告されていました。ご家族の面会時には「痛くないよ。大丈夫。」と気丈な言葉を発するけれども、それ以外の時間は寝ているかトイレやお食事の時間だけ車椅子に乗る生活です。
そこで看護師が患者様に趣味など聞き、残された時間を充実したものにしようとあれこれ考えたのでのすが、なかなか良いアイディアが出ず悩んでいました。そんななか、ご家族さまが患者様の奥様を入所している施設から外出させて病院まで面会に連れてこようか・・・との情報が飛び込みました。実は奥様も体調が芳しくなく、外出がままならない状態だったのです。
『母親は認知症がありうまく理解できないかもしれないが、おそらくこれが今生の別れとなるかもしれない。父親と母親を会わせてあげたい。』というご家族さまの希望があり、施設の方と相談の上、面会が実現しました。面会の際患者様は奥様の手を握り、笑いかけて何か話しかけようとする仕草もありました。
この機会をせめて写真という形に残してみてはどうかと思い、病棟スタッフと共に写真撮影。病棟スタッフと写真撮影後、ご家族さまは非常に喜び笑顔でお礼の言葉をくださいました。
写真は写真立てに入れてベッドサイドに飾り、いつでも患者様が眺められるようにと考えていましたが、写真立てを手渡す前に、患者様は息を引き取られました。面会からたった4日後のことでした・・・。
写真立ては、奥様の元へ渡そうと考え、後日私たち2人で施設に向かいました。施設スタッフの方の協力もあり、奥様と面会し無事にお渡しする事ができました。その時奥様はうとうとされていましたが、写真立てを渡すとわずかに目を開け、眺める様子をうかがうことができました。
今回の経験で看護師は、看取りケアは患者様だけでなく、ご家族さまを含めて関わる時間を共有する事が大切だと改めて振り返る機会となりました。